草地放牧における若令牛の栄養および肉生産 : 第1報 寒地型混播草地放牧における若令肥育牛の増体および養分摂取量
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概要
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肉用牛の人工草地放牧育成肥育中における栄養,生理,生態を中心とした技術的問題の解明および放牧終了後の仕上肥育効果について検討するため,1960年より10数年間,一連の試験を行なってきた。本報告は,1960年に行なった寒地型混播草地(利用1年目)における放牧時の試験結果である。生後8ヵ月令の褐毛和種去勢雄子牛2頭を供試し,4月より9月まで,6ヵ月間,濃厚飼料無給与の輪換放牧を行ない,以下の結果を得た。1)放牧地におけるイネ科草の割合は放牧期が進むにしたがいしだいに減少し,マメ科草の割合は夏において急激に増加した。採食草の乾物中の粗繊維含量は4月から6月までしだいに増加したが,7月から9月までのイネ科草の減少にともなって,急に減少した。これに対し,粗蛋白質含量は粗繊維含量と対称的な変化を示した。2)各期の平均1日当たり増体量は0.14〜1.65kgであったが,一般に6月下旬から9月下旬までは増体量は少なく,全放牧期間平均では0.78kgであった。3)クロモーゲン法によって調べた放牧中における去勢雄子牛の採食草量は16.3〜32.8kgで,比較的気温が低く,草地内のイネ科牧草の割合が多く,草質良好な時期に多かったが,かならずしも,月令,体重に応じた採食はみられなかった。4)採食草の有機物消化率は放牧初期に高く,漸次低下した。とくに平均気温が急上昇し,採食草中の粗繊維含量が増加する場合に低下した。5)放牧中における養分摂取量は肉用牛の日本飼養標準(若令肥育)に対し,DCPは放牧初期において著しい過剰を示し,全期間平均136%であったが,ADM,TDNは,それぞれ71%,59%で,TDN摂取量が著しく不足する傾向がみられた。6)放牧中の若令去勢雄子牛の飲水量において,採食生草による水分摂取量と飲水による水分摂取量とを合計した総水分摂取量は,放牧牛体重の約10%で,各時期に大差は認められなかった。
- 日本草地学会の論文
- 1973-04-25
著者
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黒肥地 一郎
九州農業試験場畜産部
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滝本 勇治
九州農業試験場畜産部
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美濃 貞治郎
九州農業試験場畜産部
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岩成 壽
九州農業試験場畜産部
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満岡 勝
九州農業試験場畜産部
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甲斐 光夫
九州農業試験場畜産部