傷寒に対する鍼灸治療について : 症例を用いての考察
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概要
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傷寒には広義の概念である外感による疾病のものと狭義の概念である外感風寒による疾病のものがある。『黄帝内経素問」熱論篇第三十一には、広義の傷寒について「今夫熱病者皆傷寒之類也」(発熱の病はどれも傷寒の類に属する。)と記載し、いずれの熱病も傷寒であると述べている。一方、狭義の傷寒については「人之傷於寒則為病熱」(人が寒邪に冒されると、熱が出る。)と記載し、寒邪に冒されることにより傷寒にかかると述べている。『難経』第五十八難では、傷寒を広義にとらえた場合、中風・傷寒・湿温・熱病・温病の五種類に分類されると述べている。その中で、狭義の傷寒は、寒邪によって引き起こされると述べている。「黄帝内経素問』評熱病論篇第三十三には、傷寒に対する治療方針や治療目標について記載され、その経過が変化に富んでいることから正確に把握しながら治療法を決定するべきであると述べている。『黄帝内経素問』水熱穴論篇第六十一ならびに「黄帝内経霊枢』熱論篇第二十三に記載されている傷寒に有効な経穴を用い、それらの有用性を確認できた。本症例は、頸肩背部の冷感を伴う凝りを主訴とし、腰痛、目の疲れ、嘔気を愁訴としていた。その症状が普段から汗をかかなく、冷感も頸肩背部に冷たいこんにゃくがのっている感覚があり、夏でも首にマフラーを巻かないと体内の熱が逃げて冷えてしまうということから、傷寒が表裏に及んでいると考えられた。『黄帝内経素問』熱論篇第三十一に記載されている傷寒の病期で該当する症状についての問診は、傷寒の進行程度を確認するのに有効であった。『黄帝内経素問』ならびに『黄帝内経霊枢』記載されている傷寒に対するには、それぞれ五十九穴がある。症状に合わせてそれら五十九穴を中心として他の経穴も併用しながら治療を施したところ、初診時の主訴である頸肩背部の冷感を伴う凝りはvisual analogue scale (VAS) 80%あったのが第4診時(41日後)にはVAS20%に減少した。愁訴の腰痛の方もVAS65%あったのが、同じく第4診時(41日後)VAS10%に減少した。このことから、傷寒と思われる症状に対し『黄帝内経素問霊枢』を参照しながら症状の把握、鍼灸治療を行うことは有用であると示唆された。
- 関西医療大学の論文
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