不動産売却取引の会計処理について
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概要
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本論文では、不動産売却損益の認識に関して、会計基準委員会が2004年2月に公表した「不動産の売却に係わる会計処理に関する論点整理」について、その理論的前提である「リスク経済価値アプローチ」と「事業投資リスクからの解放アプローチ」に焦点をあててつぎの問題点を検討する。その第1の問題点では「通常の不動産の売却」に「販売用不動産の売却」を含めており、棚卸資産としての売却と有形固定資産としての不動産の売却と区別していない点であるが、区別すべきであるといえよう。第2の問題点は、不動産の売却に係る売却損益の認識について、リスク経済価値アプローチが採用されている点であるが、企業経済活動の実態をありのままに写像するために構成要素アプローチを採用すべきである。第3の問題点は、売手が事業投資のリスクから開放され、その時点で収益を認識し、当該資産を費用に振り替える会計処理を行うべきとしている点であるが、不動産の売却取引を「リスクからの解放」ととらえるのは必ずしも妥当であるとはいえず、「あるリスクから他のリスクへの変換(移転)」ととらえるのが実態を表しており、資産負債アプローチに従うべきものである。
- 目白大学の論文