王羲之の権威化 : 経史と書道史の間で
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
正史の歴史書には、編纂される際に、編纂事業者の意図が組み込まれるという。小論は、唐朝で行われた正史整備事業において『晋書』を正史の歴史書の機軸においた目的や、歴史書に組み込まれた編纂事業者の意図を解明しようとするものである。検証の結果、王羲之という人物が、歴史書で重視される「文字や書人のきまり」を示す象徴として用いられることが明らかになった。さらには、彼は「仏教や老荘思想にも深い理解を示す」ということの象徴としても位置付けられていたのである。これは、正史の歴史書やその情報を補う文献を扱う際には、王羲之に象徴される文字や書人のきまりや、および三教一致といった理解が、それらの書籍に組み込まれていることを考慮しなければならないことを意味する。とくに宗教思想史や文献誌では、こうした理解が当然視されている場合が多いので、再検討を必要としよう。
- 桜花学園大学の論文
- 2002-03-31