心エコー図法による心膜液貯留に関する研究
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概要
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心エコー図法は,心膜液の検出において,その有用性は広く認められているが,診断特異性や血行動態との関連についての検討は充分なされていない。本研究では,心エコー図法による心膜液検索上の問題点を検討し,同時に心膜液貯留の診断率推移および疾患別頻度を調べた。また,心膜液貯留時の血行動態と心エコー図所見の変化を動物実験を含めて検討した。1)心膜液貯留の心エコー図所見の主体は,心周囲のecho free spaceであるが,その検出には,走査法の種類,ビームの設定方向による影響が大きかった。また,下行大動脈,拡大左房,脂肪組織,反復エコーなどによる偽陽性所見との鑑別は重要であり,echo free spaceの分布部位,心運動や体位変換との関係から多元的判定が必要であった。2)過去11年間の当教室データから,心膜液貯留の診断率をみると,心エコー図法のなかった5年間では,0.5%(14/2632例),Mモード法使用の2年間では1.8%(17/946例),断層法使用の4年間では3.5%(108/3085例)と,心エコー図法の出現,発達に伴ない診断率は大きく上昇した。疾患別頻度では,特発性心膜炎,甲状腺機能低下症,尿毒症,悪性腫瘍,SLE,PSSなどで特に高率であった。3)動物実験および臨床例において,心膜液増加に伴なう心膜内圧の変化は,指数関数的上昇を示し,それに対応して心拍出量は減少した。心エコー図所見では,心膜液が一定量になると,心は振子様運動を呈し,さらに液量の増加が続くと,その運動振幅は制限されるに至った。振子様運動の出現時期は,心拍出量の減少勾配が急峻な時期に一致し,さらに運動振幅が制限される時点は,心タンポナーデへの移行期を意味し早急な処置が必要であった。
- 千葉大学の論文
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