精神科看護の質向上を求めて : 臨床への実態調査から院内教育の現状を探る
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概要
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臨床現場ではコミュニケーション技術などを中心とした対象者との治療的な関係づくりなど,精神科看護師のスキルアップを図るため様々な工夫が行われている。しかし,対象者が個々に表出する病的体験への対応に看護者は苦慮しており,質の向上は遅々とした現状である。また,新人看護職の入職が少なく看護師の平均年齢が高いことや,精神科医療機関の9割が単科精神科病院であることなども,看護師のキャリアアップの支援体制を困難にしているのではないかと考えられる。精神科臨床における看護師の卒後教育や生涯学習という観点から,勤務しながら学べる院内教育システムづくりが急務である。今回,キャリアアップの支援体制づくりの基礎資料とするため,単科精神科病院の院内教育の現状について調査した。集計した院内研修内容を新人研修,継続研修,共通研修(全看護職対象)に分類した結果,新人研修においては,精神科の特徴を理解する研修が多く行われ,組織人としての基本的知識と態度の研修の実施はなかった。また,継続研修の実施は,業務を行うための知識を習得できる研修と組織人としての基本的知識と態度を理解する研修が行われた。共通研修は,業務実施の知識を習得できる研修が最も多く,精神科の特徴を理解する研修,組織人としての基本的知識と態度を理解する研修の順であった。看護職のスキルアップのためには,研修内容が病棟で体験しながら学べる研修が望ましい。そのためには,病棟の特徴や研修者の要望を取り入れて行う参加者参加型の研修の工夫と共に,人材の育成も必要であることが示唆された。
- 2007-03-31