取締役の経営判断上の注意義務 : 「合理的な内部統制システム」の構築を前提とした
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概要
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平成18年5月1日より、わが国において会社法が施行された。この会社法では、株式会社(とくに、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の大会社〔会社法2条6号〕)の取締役に対し、会社の経営が健全になされることを確保するためのリスク管理や法令遵守(コンプライアンス)等の体制を定めた内部統制システムの構築を義務付けている。これまでにも判例・学説上、大規模な会社の取締役には、代表取締役や他の取締役、使用人等の業務に対する監視・監督を行う上での一環として、内部統制システムを構築する義務があることが唱えられてきたが、会社法では、これを正式に立法化したのである。本稿では、会社の内部に、会社法(上場会社については、金融商品取引法も対象になる)に則った合理的な内部統制システムが構築されていることを前提に、取締役(委員会設置会社における執行役も含まれる)が、(1)業務執行権限の委譲された業務担当取締役や使用人等の業務の執行を信頼したり、あるいは、(2)それら業務担当取締役や使用人等の情報・調査等を十分に分析・検討した上で経営判断を行ったりした場合には、当該取締役の注意義務違反が問われないことを、過去の判例や学説も含め検討している。
- 2006-11-30