看護教育における臨地実習での「最も重大な体験」に関する学生の感情表現
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概要
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看護学生の臨地実習における体験は,人の生死そのものや生老病死に対する患者の強烈な思いや態度に触れるものであり,学生の行為が時に喜ばれ,時に拒否され,また将来を期待され,「驚き」,「緊張」,「不安」,「悲しみ」の感情と共に残っているものが多いことが明らかになった。このような感情が揺さぶられる体験は,Careの意味から言って看護観育成のチャンスとなるが,その場面は患者と学生の二人きりであることが多く,看護の初心者にとって危険な場面であることも明らかになった。特に,学生は事前に患者に関して気になる事があっても相談せず,体験後も不安や緊張が高まった時に遅れて感情表現する傾向があった。そのような中で,相談や感情表現は教師に最も早く多くされていること,教師へ表現するまでの時間の速さと親へ表現する量が相関すること,体験後に一人で振り返りながら考える頻度が最も高いが,それは誰かとじっくり話した頻度と相関することも明らかになった。これらから,学生が日常の家庭生活の中で表現を増やしていくことを支援することや,教師自ら相談されやすい態度や報告・相談・感情表現を受けたときの対応を吟味,鍛錬し看護師として成長していくことの必要性が示唆された。また,特に学生にとっては患者からの拒否が結果として危険回避行動となるので,拒否は患者の生命危機や苦痛増強のサインとして明確に捉えるよう指導していくことの意義も示された。さらに,重大と認識される場面において驚きという感情は独立して高頻度に起きており,他者に報告・相談する頻度を高め,看護観育成を促すきっかけになる可能性も見出せた。感情と看護観,看護実践の関連については,今後の課題としたい。
著者
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