実証と理論の応酬 : ワムシ-藻類(捕食者-被食者)系の個体群動態(<特集1>生態学における理論研究と実証研究の連携)
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概要
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個体群動態は、生態学者が古くからその理解に取り組んできた課題である。数理モデルを使った理論研究は質的に異なる様々な動態を予測し、実証研究はそのような動態が現実の個体群で見られることを示してきた。しかし、動態がどのように決まるかについて特定の説明が与えられ「理解」された野外個体群はほとんどない。また、動態に影響を与える新しい要因が、今なお発見され続けている。私たちは、モデル系として非常に単純な捕食者-被食者系を使い、その個体群動態を室内実験で詳細に調べることにより、野外個体群の動態を理解するのに資する知識を得ようと試みてきた。捕食者-被食者のモデル系としてワムシ(Brachionus calyciflorus)とその餌である藻類(Chlorella vulgaris)を用い、これらの生物をケモスタット(連続培養装置の一つ)で飼育して個体群動態を観測した。それと共に、個体群動態を説明する機械論的な数理モデルを得ようと取り組んできた。これまでに、ワムシと藻類の機能的反応と数量的反応・ワムシ個体群の齢構造と老化・藻類個体群の遺伝的多様性と迅速な進化が、この系の動態を説明するのに必要な要因であることを明らかにした。本論文では、ここまでの理解に至る過程を解説し、理論研究と実証研究がどのように有効に連携できるかについて一例を紹介したい。
- 日本生態学会の論文
- 2007-07-31
著者
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