牧草地植生の解析と診断 : 5.西富士地域におけるエゾノギシギシの生態
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概要
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西富士地域において最近繁茂が著しいエゾノギシギシ(以下Rx)の生態的防除に関する資料をうる目的でRxの多い草地,少ない草地計15ケ所を選んで,ポイント法により植生を調査し,繁成の条件を解析した。1) Rxの頻度の高い草地には,イヌビエの頻度が高く,両者の間に相関(r=0.603,p<0.05)が認められた。他方,その低い草地にはオーチャードグラス(Og),トールフェスク(Tf)及びヨモギ等の頻度が高く,それらとRxとの間に-0.520ないし-0.715の相関が認められた。2)傾斜下部の低地にはRxの頻度が高く,逆に,その上部,高地には低かった。肥沃,湿潤の立地に繁茂が著しく,イヌビエがその指標となると考えられた。3)Og等の基幹牧草と置き換わってRxが繁茂してくるのは,数年以上の経年草地であった。草地の年数とRx頻度との間に相関(r=0.603,p<0.05)がえられ,年とともにRxが増加する傾向を認めた。4)以上の結果から,Rxの生態的防除法について考察し,多年生イネ科牧草を健全に維持し,禄地の発生を防ぐこと,イヌビエが繁茂するような過度の富栄養化を避けること,早期に防除を実行することを指摘した。
- 日本草地学会の論文
- 1992-10-30