線虫が示す行動の概日リズムの時間生物学上の意義
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概要
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背景 : ショウジョウバエと齧歯類では,periodとtimelessなどの時計遺伝子群とその転写産物間の負のフィードバックが概日時計の心臓であると言われている。線虫は,この2つの相同遺伝子を持つが,これらは発生にのみ関与する。我々は,成虫線虫から行動の概日リズムの測定に成功した。線虫が上記動物とは異なる概日時計機構を持つことを示す。線虫の概日時計機構を解明するために,periodとtimelessを含む時計遺伝子群の線虫での役割及び概日時計に関与すると期待される遺伝子を操作した行動リズムを調べることにした。方法 : "WormBase"を使って時計遺伝子と高い相同性を示す遺伝子を検索し,生理機能を調べた。従来の行動測定装置を同時に24匹の線虫の行動が測定できるものに改良した(bug-tracker24)を使用し,概日時計機構に関与する遺伝子群をノックアウトした線虫の概日リズムを測定する方法を検討した。結果 : 線虫は,CRYを除き,時計遺伝子ホモローグを持つ。しかし,これらは線虫では,発生に関与し,概日リズムとの関連は希薄であることが判明した。CREB変異体の行動リズムを測定してBug-tracker24の信頼性を確認した。結論 : 線虫は孵化から死ぬまで概日リズムを示すが,時計遺伝子ホモローグは発生時にしか発現しない。線虫の概日時計機構は,より進化した動物にも保存され,陰で時計遺伝子をも支配している可能性が考えられる。bug-tracker24はこれを確認する有効な手段となるであろう。
- 2005-06-30
著者
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三枝 徹
北里大学大学院医療系研究科脳機能科学
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岩井 榮一
北里大学大学院医療系研究科脳機能科学
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長谷川 建治
北里大学大学院医療系研究科脳機能科学
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長谷川 建治
北里大学大学院医療系研究科脳機能科学:北里大学医学部生理学
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長谷川 建治
北里大学大学院 医療系研究科
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