現代の公共圏とコミュニケーションをめぐる一考察 : 「菜の花プロジェクト」を例に
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
滋賀県東近江市(旧愛東町)から全国に展開した「菜の花プロジェクト」による循環型地域社会形成の試みを採り上げ、現代の公共圏とコミュニケーションのあり方について、ハーバーマス(Jürgen Habermas)の「市民的公共圏(性)」の概念に基づく分析を行った。具体的には、市民的公共圏には、対等性・柔軟性・公開性という3つの基準があることに着目し、菜の花プロジェクトが、「対等性」の面では多様な主体の参加とその促進、「柔軟性」の面では地域の問題解決の枠組みの住民への開放、「公開性」の面ではウェブサイトを通じた情報公開や、研究交流イベントのオールセッション型の開催などを通じ、3つの基準を満たすことを検証した。また、現代の市民的公共圏の複合化という状況において、菜の花プロジェクトが「地域」と「全国」、あるいは「市民と市民」「専門家と専門家」と「市民と専門家」間の「二層のコミュニケーション」を維持することで、生活世界との関係を保ち、3つの基準を維持していることを明らかにした。以上のことから、現代の市民的公共圏の形成・存続には、親密圏たる生活世界に根づいた継続的なコミュニケーションのある活動から立ち上がっていること、対等性・柔軟性・公開性の3つの基準を満たしていること、自らの複合化を受け入れ発展させつつ、その中で二層のコミュニケーションを維持していくことが必要であると考える。