脳と心
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概要
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脳に関する研究は画像処理技術の発達に伴い,ここ二・三十年の間に急速な発展を遂げた。だが,脳と心の関係の基本的な哲学的問題を巡る状況は,デカルトの時代からあまり変わらない。心理現象を脳の有機的な現象に還元して説明する立場,すなわち唯物論あるいは付帯現象説が多くの神経科学者を支配している一方,その立場に異議を唱える科学者や哲学者もいる。独自の地位を心理現象に認める者にも,今日では実体二元論者と性質二元論者がいる。こうして心あるいは意識の神経相関者が解明されつつある一方,今日の唯物論に方向付けられた神経科学では原理的に解明不可能と思われる現象がいくつか指摘できる。これらの謎を解明するには,研究の方法に革新が必要に思われる。また,神経科学の今日的な発見は神経倫理学という新しい研究分野を生み出しており,そこでは脳の展望から道徳が吟味されようとしている。
- 札幌学院大学の論文
- 2007-03-07