ウィリアム・ブレイクの喜劇性
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概要
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アリストテレスの「喜劇論」が失われたのはある意味では必然的な社会の意図的な操作であったのではないだろうか。喜劇とはユーモアであると同時に皮肉が込められている諷刺劇であり、時代の政治的動向により反感を買うこともその喪失の可能性として有り得たかも知れないからである。また、シェイクスピアにとってもその作品から覗えるように、悲劇と喜劇は表裏一体であり、特に喜劇の中に神秘性が潜んでいると考えられる。それゆえに特に喜劇において微妙な感性が芸術家の才能として表現されていると言えよう。その意味でウィリアム・ブレイク(1757-1827)の『月の中の島』(An Island in the Moon, c1784)という作品は喜劇作品としての伝統を維持していると言えよう。更に『無垢の歌』(Songs of Innocence, 1789)から『無垢と経験の歌』(Songs of Innocence and of Experience, 1794)への変遷、Four Zoas(「聖書」では<四つの生き物>)の誕生があり、一連の『預言書』の中で語られ、そのモチーフが実は初期作品から後期作品までの各段階で微妙に変化し、人間の内面性への皮肉が一貫した形で諷刺作品という形態を生み出しているのである。そして、興味深い点はブレイクは戯曲家あるいは物語作家として作品を書こうとしていたのではないか、という点である。後期預言書は形式的には叙事詩ではあるが物語詩であり、ある意味では戯曲である。その原点としての『月の中の島』は詩人としてのブレイクの顔はもちろんであるが、諷刺作品としてのギリシア喜劇やシェイクスピアの喜劇、スウィフト諷刺物語、ロマン派の人間性への追求を訴える作品へと繋がる流れの中で、喜劇作家として役割も見せてくれているのである。
- 2007-03-31
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