Blake's Dramatic Imagination戯曲家ウィリアム・ブレイクの想像力
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概要
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ウィリアム・ブレイク(1757-1827)の作品を論じるときに宗教観あるいは宇宙観的思想の特異性において論じられることが多い。ブレイクの思想を《人間性》に重点を置くならば、文学的な意味での人間と人間のコミュニケーションを題材にした作品に焦点を絞って考えてみるのも必要なことと言える。芸術論を論じたアリストテレス以来の悲劇と喜劇を考えるとき、その悲劇と喜劇は表裏一体であり、特に喜劇の中に神秘性が潜んでいると考えられる。喜劇とはユーモアであると同時に皮肉が込められている諷刺劇であるからである。その意味において、『月の中の島』(An Island in the Moon, c 1784)は極めて初期の作品でありながら、ブレイクの思想の重要な鍵を握っている作品と言えよう。なぜならば、『無垢の歌』(Songs of Innocence, 1789)から『無垢と経験の歌』(Songs of Innocence and Experience, 1794)への変遷とZoasの誕生がすでに見られるからである。また、ブレイクの一連の予言書に登場するZoasのモチーフが実は初期のどの段階で生まれたのか、また、「人間の精神の相反する2つの状態(The Two Contrary States of the Human Soul)」がどのようにして生まれたのかを今一度考察してみることにもつながる意味で意味深いからである。そして、興味深い点はブレイクは戯曲家あるいは物語作家として作品を書こうとしていたのではないか、という点である。後期予言書は形式的には叙事詩ではあるが物語詩であり、ある意味では戯曲的であると言える。その原点としての『月の中の島』は詩人としてのブレイクの顔はもちろんであるが、小説家としての姿勢、シェイクスピアよろしく問題劇とも言える喜劇作家としての様相を見せてくれているのである。
- 2006-03-31
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