『万葉集』の天・地・人構成 : 「人」の部と柿本人麻呂
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概要
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「初期万葉」は、朝廷が、王権意識とその指導理念とを示そうとした勅選の歌集である。それは、同じ時代思潮の中で、王権が企画、監修した『古事記』、『日本書紀』そして『風土記』と全く同じ性格の編纂物であった、と見る。天皇思想は、王権を天の存在として主張した。もうひとつ、革命を恐れた王権は、和の世界を主張した。そこに用いたのが中国から学んだ天・地・人の合一の精神であった。そうして、天の示す暦数、そして天(9)・地(8)・人(6)和合の数字を聖数とした。小論の主題は、「初期万葉」が、その天・地・人の構成を採り、その人部が柿本人麻呂の作品から成っているということであり、その証明であった。そのことを言うために、「初期万葉」の構造面での発展経緯を説くと共に、そのそれぞれの段階に働いた政治的な思惑に触れ、天分暦数、天文地理、陰陽五行説などいくつもの視点から触れることになった。もう一点、副題の柿本人麻呂という名前について。天・地・人構成の人部に人麻呂の作品のみが宛てられていることを証明し、柿本人麻呂が初めから人麻呂という名であったか、人部に作品を宛てられたことで、その名を人麻呂としたのか、という謎の問題を提示した。
- 2006-12-31
著者
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