政策・制度・法律からみた「医療福祉」(<特集>医療福祉学展望)
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概要
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今日「医療福祉」という言葉を見聞きするが,その意味するところはいまだはっきりしない.医療福祉を「医療」と「福祉」の単純な統合体あるいは総合概念とする考えがある一方,「医療福祉」の4語に,単なる統合概念を超えた新しい意味を持たせようとする考えもある.戦後これまで,医療と福祉に関するさまざまの政策,制度あるいは法律が作られ,時代時代の国民のニーズに応えてきたが,これらの政策,制度,法律を時代に沿って観察してみると,「医療」と「福祉」という用語は出現するが,「医療福祉」の語を使用した例はみられない.つまり,これまで「医療」と「福祉」は別のもの考えられ,その前提で制度,法律が作られてきた.しかし,「医療」も「福祉」も,それぞれが重なり合った部分を持ち,あるいは連携する形で現実には存在し,機能している.「医療」は,われわれに,比較的明解な共通したイメージと意味を与えるが,「福祉」は,いまだに曖昧で漠然としたイメージと意味しか与えない.わが国にあって,戦後,社会経済状況が大きく変わり,国民のニーズが拡大し,変化し,多様化する中で,医療も福祉も守備範囲が広がり,高齢者のニーズを典型に,1人の人間をめぐって医療(サービス)と福祉(サービス)の両者が同時に求められ,また,両者揃ってはじめてニーズに応えることができるようになってきた.これら複合的なニーズに応えるために,これまでさまざまの制度が法律という手段を用いて作られ,それらの制度の総体が「社会保障制度」と呼ばれようになった.「医療」および「福祉」には,人に対するサービス・給付という共通点があり,最終的には「健康で安心できる生活の保障」という理念と目標を持つ点で合致する.国民の持つ複雑で複合的なニーズについて「社会保障制度」を幅広く有機的に機能させて,「健康で安心できる生活の保障」という理念・目標・目的を実現するためのシステム全体を「医療福祉」と称することが適切であろう.
著者
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