優生思想の社会史序説 : 明治以降の日本社会を例に
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概要
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本稿の目的は、わが国における優生思想の変遷過程をフェミニズム運動との関わりから考察することにある。今回は、最初の試みとして、戦前期における青鞜運動と戦後期におけるリブ運動とに着目する。青鞘運動においては、女性の「性と生殖の自己決定」という今日的な課題が提起される一方で、「母性」を強調するあまり、結果として国家主義的な優生思想を肯定する傾向もみられた。戦後、1970年代初頭に生まれたリブ運動は、日本における母性の議論に優生主義的傾向が潜んでいることを見抜いた。リブ運動が闘った様々な課題のなかで最大といえるのは「優生保護法改正案」阻止をめぐる闘争である。この中で目指されたのは女性の「性と生殖の自己決定権」の確立である。闘争の過程でリブ運動は、優生保護法に潜む国家による生殖の管理を看破し、母性の議論に潜む優生思想的傾向を看破した。この意味でリブ運動が果たした役割は非常に大きい。しかし、リブ運動においてなされた主張は、その一方で生殖に関わる女性の権利と生命の尊厳とはいかに両立できるかという重大な問いかけを残すことにもなった。この問題は、先端生殖医療が可能となった今日、ますます現実的なものとなっている。フェミニズムはこの問題に対して、いかに解答すべきかを迫られている。
- 2004-02-13
著者
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