植民地経験とチーフの土着化 : 非集権的なイボ社会の権威者をめぐって
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概要
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本論文では、植民地時代のナイジェリアにおいてチーフを地方管理のエージェントとして用いた植民地政策が非集権的なイボ社会に与えた影響と、それに対する人々の対応を分析する。チーフの地位が導入され、定着していった過程にイボ人たち自身が果たした主体的な役割を論じ、アフリカの人々にとって「チーフの創造」をめぐる植民地経験とはいかなるものであったかを再考する。植民地政策を契機とした「チーフの創造」に関しては、研究者の多くが「植民地支配者がチーフを指名した」と考えている。しかし厳密にはイギリス政府が指名したのは原住民裁判所や原住民当局のメンバーである。「チーフ」とは政府がメンバー選出の前提として想定した地位であり、誤って裁判員に対する呼称として用いられるようになった言葉である。イボ社会では暴動の勃発によって植民地化当初の裁判員制度の失敗が明白となると、政府はもはや裁判員を「チーフ」と呼ぶことを止めた。だが人々は裁判員を指して「チーフ」と呼び続けた。さらに解雇された裁判員や地方議会議員など、植民地政府が想定しなかった人々も「チーフ」と呼ぶようになった。即ちイボ社会において「チーフ」の概念を産み落としたのは確かに植民地支配者であるが、それを育て養ったのはイボ人たちなのである。植民地支配のエージェントの役割を果たしたチーフたちは、従属的な立場にある人々から見ても、彼らと外部社会の支配権力を結ぶ非常に限られたチャンネルの一つだった。人々は自分たちの生活に大きな意味を持つようになった外部社会と自分たちをつなぐ媒介者としてチーフたちを認識したのであり、新しい有力者の姿としてチーフたちに重要性を見出したのである。閉じた社会の権威者ではなく、開かれた社会の媒介者としての役割こそ、もともと非集権的な社会の人々がチーフたちに求めた役割なのである。それは植民地支配という抑圧的で限定的な文脈のなかで、彼らが変動する世界のなかに自らを位置づけ直すために用いた戦略の一つなのである。
- 日本文化人類学会の論文
- 2006-12-31
著者
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