市場経済化と牧畜的消費様式 : ケニア中北部・サンブルの世帯経済の事例
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概要
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本論考は、ケニア中北部・サンブルの世帯経済における家計の検討を行い、生業経済と市場経済が複合化した牧畜的な消費の様式を明らかにすることを目的とする。筆者は、裕福な世帯Aと貧しい世帯Bを対象として、1995年から1996年にかけての一年間の家計資料を分析した。その結果、以下の諸点が明らかになった。(1)両世帯とも収入の多くを家畜の購入に費やしており、家畜の損失を防ぐために、現金を利用する家計戦略を採っている。(2)裕福な世帯Aでは、サンブルの文化における食への関心に呼応して、恒常的に市場を利用して食の消費を営んでいるが、貧しい世帯Bでは、食の消費は散発的で、自給可能度を規定する降雨量の変動に影響されやすい。そのため、エンゲルの法則とはむしろ反対の結果を示す。(3)裕福な世帯Aでは、家計拡大的な戦略を採っているのに対して、貧しい世帯Bでは、家計維持的な戦略をとっており、銀行預金や商業の在り方もそれに応じて異なっている。(4)サンブルの家計戦略は、倹約を基調としており、現金の支出を抑えつつ、家畜への投資を行う堅実な家計運営が社会的に評価される。このように、サンブルの世帯では、永続的に先送りされた利得をもたらす家畜を、商品世界よりもむしろ重視しており、永続的な遅延利得体系を基調としている。こうした牧畜的消費様式により、市場経済への完全な従属に歯止めがかけられたと考えられる。
- 2006-09-30
著者
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