「正しい」宗教をめぐるポリティクス : マレーシア・サバ州、海サマ人社会における公的イスラームの経験
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概要
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マレーシア・サバ州東岸の海サマ人とフィリピン・スルー諸島南西部の海サマ人は、古くからひとつの生活圏を共有してきた。海サマ人はフィリピン側・マレーシア側いずれにおいてもイスラーム化しているが、フィリピン側の海サマ人は因習的に他のムスリムから「正統ならざる」ムスリムとみなされ、いまだ蔑視されている。一方マレーシア側の海サマ人は、地域社会において広くムスリムと認知されるようになっている。なぜマレーシア側ではこのような状況変化が生じたのか。いかに海サマ人はイスラーム化し、ムスリムとしての認知を得ることができたのか。本稿は、サバ州東岸のセンポルナ郡に居住する海サマ人を対象として、かれらのイスラーム化をマクロな政治的、社会的文脈において考察することを目的とする。サバ州においては、1970年代以降、イスラーム行政と教育の制度化が急速に進められた。制度化が進みに従ってセンポルナ郡では、イスラームの社会秩序が再編された。特に注目されるのはムラユ人教師やムラユ語、そして公的宗教機関が、スルー諸島に起源する知識人にとってかわり、イスラームの権威を表象するようになったことである。マレーシアとサバ州という国家枠組におけるイスラームの制度化=公式化と、それにともなって進行したイスラームをめぐるローカルな社会秩序の再編。本稿は海サマ人のイスラーム化の歴史過程を、こうした宗教をめぐる政治的、社会的文脈に定位して理解しようとする試みである。
- 2004-06-30
著者
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