前頭葉神経活動で観察される多安定性と不規則な発火パターンは,抑制性優位な神経回路で説明できる
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概要
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遅延反応テスト課題を行うサルの前頭葉には,記憶すべき視覚刺激の位置に特異的な高頻度発火活動を示す神経細胞の存在が知られている.この活動は外部入力なしに保持されるため,多安定性を持つと考えられる.この神経細胞の発火パターンは,課題実行時においても,それ以外の時においても非常に不規則で,高いCV値を持つ.従来の神経回路網の理論研究から,興奮性の再帰的結合によって双安定性が実現できることはよく知られている.しかしその際には,発火頻度が高くなるほどCV値は低くなるため,このようなモデルのスパイク統計は実際の神経活動のそれとは一致しない.一方,興奮性入力と抑制性入力がバランスされていると,その神経は高いCV値を持つ事が知られているが,その場合には双安定性を持たせることが難しいと考えられていた.本報告では,以下の2点を報告する.1)Leaky Integrate-and-Fire (LIF)神経モデルにおけるHopf分岐を用いた解析から、δ関数型のシナプスを持つ神経回路網では、双安定領域に到達する前にHopf分岐線が存在する事が示された.このHopf分岐の効果により、実際の数値計算では多安定状態を実現することが難しい事が示唆される.2)次に指数減衰型のシナプスを持つLIFモデルからなる中立安定な側抑制型神経回路モデルを用い,抑制性が優位な再帰結合を持つ場合にも低頻度発火状態と多数の高頻度発火状態という多安定性を持つことができることを平均場近似を用いた自己無撞着方程式から示し,両発火状態において,高いCV値(〜1)を実現できることを報告する.
- 2007-03-07
著者
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濱口 航介
理化学研究所脳科学総合研究センター
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BRUNEL Nicolas
Laboratoire de Neurophysique et Physiologie, UMR 8119 CNRS-Universite Rene Descartes
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濱口 航介
理化学研究所脳科学総合センター甘利研究ユニット:laboratoire De Neurophysique Et Physiologie Umr 8119 Cnrs-universite Rene De
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Brunel Nicolas
Laboratoire De Neurophysique Et Physiologie
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Brunel Nicolas
Laboratoire De Neurophysique Et Physiologie Umr 8119 Cnrs-universite Rene Descartes
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濱口 航介
理化学研究所 脳科学総合研究センター
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