インドネシア・スマランに現存するコロニアルハウスとの比較によるクドゥスのネイティヴ・コロニアルハウスの平面形式の系譜

概要

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前編では、クドゥスに現存するコロニアルハウスの実態について報告するとともに、その特徴を考察した。その結果、タバコ会社のネイティブ・コロニアルハウスには、クドゥスに現存するダッチ・コロニアルハウスの住宅様式の移植とは異なる、地元住民の生活様式に合わせた独自の展開が窺えた。特に、平面形式において、2列型と3列型という2つの形式を見出した。本稿は、前編での結果を踏まえ、他の都市に残るコロニアルハウスとの比較を通して、クドゥスにおけるタバコ会社のネイティブ・コロニアルハウスの平面形式の成立と、その系譜を明らかにしようと試みるものである。比較の対象として、クドゥスから西に約55km離れた大都市であるスマランに現存するコロニアルハウスを選定した。スマランは、植民地時代に中部ジャワ州の州都としてオランダ人により統治された主要都市の1つである。また、1881年に、オランダ人の手により、スマランからクドゥスを経由してスラバヤへ至る鉄道が開通した。この鉄道は、スマランを中継点とし、クドゥスの主要産業であるタバコ産業に関連した原材料や製品の輸送に利用された。これらの点から、スマランが歴史的にクドゥスと非常にかかわりの深い都市であるといえる。2006年3月に行った現地調査により、スマランにおいて136棟のコロニアルハウスの存在を確認したが、研究の目的上、規模の点でクドゥスにみられたコロニアルハウスに類似するものを検討対象とし、実測および写真測量を行った。比較検討の結果、スマランにおいて、19世紀後半から20世紀初頭にかけ中華系商人を含む富裕層によって建設されたコロニアルハウスに、クドゥスにおけるタバコ会社のコロニアルハウスにみられる3列型に類似した平面形式が認められた。また、平面形式のみならず、装飾の使用法等にもいくつかの共通点が見出せた。当時の中華系商人は物流を担っており、クドゥスのタバコ会社とも関係があったと考えられる。さらに、3列型の平面形式を有すコロニアルハウスは、植民地時代最初期にオランダ人が持ち込んだ住宅に原型を求められる。換言すれば、3列型に限れば、植民地時代初期にオランダ人によってスマランに持ち込まれた住宅形式が、富と名誉を表す住宅として裕福な地元住民に引き継がれ、商業活動の交流とともにクドゥスに持ち込まれたと仮定しうる。一方、クドゥスのタバコ会社のコロニアルハウスにみられる2列型と類似した平面形式を有すコロニアルハウスは、今回の調査では発見できず、その系譜については、今後の調査の結果を待って明らかにしていく。
2007-05-30

インドネシア・スマランに現存するコロニアルハウスとの比較によるクドゥスのネイティヴ・コロニアルハウスの平面形式の系譜

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