米国における日本製カメラの競争優位の構築 : コスト-品質のフロンティアを基にして
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概要
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日本製カメラは、1965年以降、米国市場において「安かろう悪かろう」から「安くて良い」評価をえて、米国製やドイツ製のカメラに対して競争優位性を構築した。本報告は、米国における日本製カメラの競争優位の構築過程を、G・サローナー、A・シェパード、J・ポドルニー(2002年)がいうコスト-品質のフロンティアに基づき定量的に検証する。この二つの指標は組織能力とポジション優位の組み合わせによって構築されている。組織能力についてはカメラ企業の米国市場開発を、ポジション優位については、製品ブランドの構築過程を定量的に検証する。コスト-品質について継続的客観的データが入手できる"Consumers Union"(CU,米国消費者同盟)『コンシューマー・レポート』(1936年創刊)を使用した。コストは、入手が困難なため、コストが価格に反映しているという前提で、入手可能なCU調査の表示価格を代用した。品質は、CU評価のスコアを点数化して使用した。日本製カメラの輸出は、55年以降、二眼レフやレンズシャターカメラを中心に対米輸出が急増した。日本製がドイツ製を追い抜いたのは、62年に生産数・金額で、64年に輸出金額、67年には輸出台数と品質が、さらに、76年頃に信頼性においても凌駕した。検証の結果、日本製カメラは、65年以降の米国市場において、米国・ドイツ製カメラに対してコスト-品質面で競争優位性が構築されたことが確認できた。(1)日本製カメラのCU評価が「安くて良い」という競争優位性は、58年頃に二眼レフ、65年頃にコンパクト、72年頃に一眼レフが構築した。(2)日本製カメラの確かな品質・信頼性に裏付けられた製品ブランドは、CU高評価の多さもあり、消費者への知名度向上、ひいては企業ブランドの構築に大いに貢献したといえる。日本のカメラ企業が、社名やロゴに使うようになったことからもいえる。(3)日本企業のCU高評価の順位は、米国進出がステップ2(企業進出と現他業者の利用)やステップ3(自社販売経路の開発と促進活動の実施)の早い順位とほぼ一致する。もっとも、50年代以降、先発企業が自社製品ブランドによる対米輸出とアフターサービス体制の整備、政府の輸出検査による粗悪品輸出防止、60年代の一眼レフ、レンズシャッターカメラなど新製品・生産技術開発体制の構築、70年代から直接販売体制の構築も大いに寄与した。課題は、さらなる企業ブランド力の強化と商品・サービスの高付加価値化などによる競争優位性の構築であろう。
- 国際ビジネス研究学会の論文
- 2006-09-30