進化するグローバル戦略とグローバル経営 : 世界自動車産業のグローバルビジネス展開を中心に(進化する国際ビジネス)
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概要
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近年GMやフォードの急激な赤字転落が報じられ、世界の自動車市場が後退しているわけでもないのにその理由が何であるのかについて、論議を呼んでいる。少なくとも今から7-8年前にはこれらメーカーは、北米と欧州をむすぶ大合併をやったダイムラークライスラーを加えると、グローバル再編の先頭を切ったはずであり、そのグローバル戦略が成功すれば世界のグローバル競争をリードできるはずであった。3社とも赤字の直接原因は北米事業の不振であるが、実はそれだけではなくグローバル戦略におけるミスリードが大きく影響している。この論文ではこれらメーカーのグローバル戦略が規模の経済性だけを過信したグローバルM&Aによる数合わせの合併を基本にしたことに大きな原因があり、その戦略の柱ともいうべきグローバルプラットフォーム戦略と部品のグローバルソーシング戦略のもつ問題性を明らかにするとともに、合併による二つの企業のシナジー効果を安易に考え、これを追求するうえで企業文化の融合の難しさを理解できなかったことにあることを指摘する。この点でグローバル再編の先頭を切ったこれら3社に比べ、相互の企業文化の尊重を原則としたアライアンスの道を選択したルノー・日産の場合、シナジー効果とそれぞれの企業のブランドアイデンティティを調和させることに成功したことも明らかにしている。このような3社に比べて、当初グローバル再編で出遅れたかに見えた日本の自動車メーカーが、近年ますますそのグローバル競争力を高めつつあるが、そこに至る過程をここでは明らかにする。 90年代前半に急激な円高とバブル経済後の構造不況に見舞われた日本の自動車メーカーは、90年代後半にはグローバル再編の影響をもろにうけ、トヨタ、ホンダのような民族系メーカーと外資系グループに二分されたが、その後どの企業もおおむね業績好調である。その業績好調もかつてのような輸出中心でなく、国内事業のリストラによる損益分岐点の引き下げ効果と海外事業がいろいろな地域で現地工場を主体とする業績が上昇し、為替フリーの傾向が生まれ、まさに期せずしてグローバルビジネスに支えられるに至っている。以上のような点を明らかにしながら、この論文では、世界自動車産業におけるグローバル戦略をめぐる明暗とその中から浮かび上がってくるグローバルビジネスの進化、今後のグローバルビジネスの方向性、グローバル再編の行方について明らかにしようと試みる。
- 2006-09-30
著者
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