咀嚼中の第一大臼歯の咀嚼速度と食品物性の関係
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概要
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ヒトの第一大臼歯の頬側に小型円盤形強力磁石を貼り,磁場測定から食品を咀嚼するときの歯の動きに換算した.歯の上下方向の位置変化データを時間微分し,第一大臼歯の咀嚼速度を求めた.各種食品の咀嚼閉口速度と食品物性値(ヤング率,破断強度)との関連をみた.摂食から嚥下までの咀嚼過程における咀嚼速度の変化を検討した.(1)ヒトの咀嚼1回目の咀嚼閉口速度は37〜74mm/sで,機器測定の最大速度10mm/sと比較して約4〜7倍速かった.(2)咀嚼1回目の咀嚼閉口速度は食品のヤング率と負の相関がみられ,破断強度とは相関がみられなかった.機器測定でヤング率が大きい食品は,ヒトにおいて咀嚼1回目の咀嚼閉口速度が遅く,ヤング率の小さい食品は速い傾向にあった.(3)食品の水分含量,組織の違いにより,咀嚼過程において食品物性の変化の様相が変わり,咀嚼速度の変化に違いがみられた.咀嚼過程において第一大臼歯の咀嚼速度が変化しており,食品を口の中に取り込み切断,破断しながら唾液と混和する間の食品物性の変化が生じる過程と嚥下が可能な状態に食塊を形成する過程を表していることが示された.また,咀嚼速度の変化を3種に分類し,食品物性,食品組織水分含量によって以下のように説明することができた.(A)咀嚼速度の変化が少ない食品:元来の水分量が比較的高く,細片になっても食品組織は大きくは変わらず咀嚼過程で唾液による物性変化が少ない食品.(B)咀嚼速度が増加した後に減少する食品:水分含量が少ない食品で,咀嚼するにしたがい食品細片に唾液が吸収または混ざりあい軟化し,ヤング率が低下するために咀嚼速度が一旦速くなり,食品組織が壊れ食塊形成過程に移行する食品.(C)次第に速度が減少していく食品:食品本来のヤング率が小さく,咀嚼1回目の閉口速度は速く,咀嚼中に唾液と混和し食品組織が壊れていき食塊形成過程に移行する食品.
- 2007-03-15