「十五年戦争」と作家「川端康成」(覚え書き) : 昭和十年代の「作品」を中心に
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概要
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川端康成は、他の文学者と違い、戦争に反対も賛成もしなかったと言われている。川端自身「戦争の影響を受けなかった」とも述べている。しかしその根底には戦争あるいはそれを生み出した近代への<反抗>の精神が脈打っていたのである。しかし川端は、そうした思いを胸中に深く秘し沈め、ひたすら世相に背を向け、古典の世界に沈潜していった。だがそのとき川端は、自分の姿を「時勢に反抗する皮肉」を含んだものとして、自虐的に捉えることを忘れなかった。それが「敗戦」を機に、一気に揺り戻される形となった。所謂川端の「古典(伝統)回帰宣言」である。「敗戦」や相次ぐ知己の死といった、外的要因はあるにせよ、川端の戦後の姿勢は、本来あるべきものに諦念が加わった閉塞的なものを種としている。それこそが「国破れ」た結果とも言えようが、戦前の川端が見出そうとした日本文学における「反逆精神」、そしてそれを育むことのない貧しい近代日本の精神風土への絶望が、川端をして<転向>せしめたと言えよう。そうした一連の川端の精神の遍歴を見ずして、戦後の「古典(伝統)回帰宣言」の真の意味を捉えることはできない。本稿ではそうした観点から川端と戦争の問題について考察した。
- 桜花学園大学の論文
- 2005-03-31
桜花学園大学 | 論文
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