糖尿病セルフケア能力の学習による変化 : 家族や地域の人々を巻き込んだ活動への発展までを視野に入れて
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概要
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背景 地域保健活動における糖尿病予防対策の中に、個別健康教育が導入された。しかし、個別健康教育の課題として、環境をより健康的に整備していく担い手の一人として健康教育受講者を位置づける必要性が指摘されている。このような視点から、家族や地域の人々を巻き込んだ活動への発展までを視野に入れ、糖尿病予防教室を受講した地域住民がセルフケア能力を獲得していく過程を評価する自己評価表を作成した。個別健康教育に集団健康教育を組み合わせ、作成した自己評価表を用いて受講者の学習の進行具合を確認しながら学習支援することで、受講者のセルフケア能力を高めることができると考えた。目的 セルフケア能力獲得過程を組み込んだ自己評価表を用いて健康教育を実施し、家族や地域の人々を巻き込んだ活動への発展までを視野に入れて、受講者の本学習プログラムによる変化を、セルフケア能力、自己管理行動、HbAlc値を指標に検討した。方法 都市部と地方の各1区・町において、個別と集団の学習を組み合わせ、自己評価表結果を個人の学習援助に役立てる健康教育を実施した。教室受講者40名(都市部18名、地方12名)に、教室受講前、開始後4か月日に調査を実施した。都市部では、教室非受講者73名を対照として、教室開始前と1年後に、受講者と同時に調査を実施した。調査内容は、自己評価表によるセルフケア能力、糖尿病自己管理行動尺度、血糖値、HbAlc値とした。教室受講者の受講前後、都市部の受講者と非受講者各々の教室1年後の変化を平均値を用いて比較した。また、自己評価表の下位尺度得点を用い学習の発展過程をパス解析を用いて調べた。結果 教室受講者の指導4か月目は、自己評価表得点、自己管理行動得点、HbAlc値ともに、受講前に比べ、有意に改善していた(t検定:p<0.01)。教室受講者の1年後の、自己評価表得点、自己管理行動得点は、受講前に比べ高かった(t検定:p<0.01)が、HbAlc値の改善は認めなかった。教室非受講者の1年後の、自己評価表得点、自己管理行動得点、HbAlc値ともに、受講前に比べ、変化は認めなかった。パス解析からは、教室受講者では、<関心>→<病態理解>→<食事・運動の改善点と解決策>→<実行と効果の確認・修正>→<周囲への働きかけ>の学習の流れが示された。一方、非受講者の1年後では、<病態理解>→<食事・運動の改善点と解決策>→<実行と効果の確認・修正>となった。結論 教室受講者は、自分の健康課題を入り口に、自分の健康課題を解決していく力を高めながら、家族や地域の人々への生活にも関心を向け一緒に健康的な生活を送るよう働きかけていくことが示唆された。教室受講者を環境をより健康的に整備していく担い手として位置づけ、健康教育を立案していく必要性と、受講者の変化を維持・向上させていくよう、地域活動の中に取り込む仕組みづくりの大切さを示唆するものと考える。
- 滋賀県立大学の論文
- 2005-03-31
著者
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北村 佳江
米原市山東健康福祉センター
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滝澤 寛子
滋賀県立大学人間看護学部
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原田 美根子
麻生保健福祉センター
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中野 小百合
米原市伊吹保健センター
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木村 祥子
麻生保健福祉センター
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草野 美香
宮前保健福祉センター
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津田 多佳子
多摩保健福祉センター
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野国 千恵子
リハビリテーション医療センター
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