幼児期における五感と想像力を育てるための考察とその実践 : クラシック・ピアノ演奏による幼児教育の可能性
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概要
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本論は,2004年8月26日伊勢崎市文化会館小ホール(群馬県)での「五感を育てるコンサート」実施にいたるまでの研究過程および実践方法をもとに,クラシック・ピアノ演奏による幼児教育の可能性について書したものである。クラシック・ピアノ演奏を用いる意義,用いる際の環境構成(対象・場所・曲目)および五感と想像力を育てるための援助方法についての考察,実践の記録からなる。クラシック音楽は幼児にとって,これだけ情報社会,文化交流がすすんでいる現代においても決して馴染みのある音楽とは言い難く,幼稚園教育要領「表現」のねらい及び内容である「生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ,イメージを豊かにする」の「生活」の中にはまだまだ入っていない。しかし,今までふれたことのない世界だからこそ,五感を刺激し,育てる力を内包している。また,具体的なストーリーや事物に限定されず,自由な発想やイメージを描くことができる音楽は,想像力を育てるのにも適していると思われる。ただし,クラシック音楽を幼児教育にとり入れるためには,適切な環境構成と援助が必須である。実施場所は,音響,演奏者と幼児の距離の両方を考慮しつつ,慎重に構成する必要があり,席も幼児一人一人の感受性や反応に対応できるセッティングが望ましい。選曲にあたっては,ねらい達成を目的としながら,楽曲と幼児を結ぶ何らかの橋渡し的素材を含むものが求められ,語りかけ(想像力を育てる素材・基準の提供やコミュニケーション)や,幼児自らが参加できるプログラムを導入することも大切である。クラシック音楽を生の演奏で奏でることは,ある意味,絵本のよみきかせと共通する部分も多い。質のよい音楽を,語りかけなどの援助を行ないながら直接幼児に聴かせてあげることによって,音楽は息づき,幼児の五感や想像力につよくはたらきかけるだろう。
- 2006-03-31