寄生蠕虫症の免疫診断
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
寄生蠕虫類による感染症の診断は,一般的に寄生虫学的検査により虫卵や虫体を検出することによる。しかし,虫卵・虫体の検出が容易でない場合や本質的にできない蠕虫感染があり,このような場合には免疫診断が重要な手掛りとなる。最近の傾向として,我国では,多くの寄生蠕虫症については免疫診断の手助けを必要とする症例が増えており,信頼性のある免疫学的検査の確立が望まれている。また,世界的には10数億から数千万人単位の感染者をもつ蠕虫感染は数多くあり,これらの寄生蠕虫症について防圧,撲滅対策が行なわれている。そのための疫学調査にも免疫学的検査が大きな役割を果している。感染症の免疫診断は,病原体特異抗体を検出する方法と,病原体由来抗原を検出する方法とに区分される。寄生蠕虫に特異的な抗体を検出するには,免疫学的手法の種類,虫体抗原の種類,検出する免疫グロブリンクラスとIgGサブクラスの種類,検体材料の種類など,それぞれの項目ごとに多種多様な組合せで,目的に適なった免疫学的検査が行なわれている。寄生蠕虫類は多細胞生物で,しかも虫卵,幼虫,成虫と発育期をもつため抗原の種類は多彩であり,その中から免疫診断にとって最良の抗原を分画,精製することが必要となる。現在では,分子生物学の発展によりリコンビナント抗原の作製も可能となり,いくつかの蠕虫症で利用されるようになった。一方,寄生虫由来抗原を検出する方法では,バンクロフト糸状虫症と住血吸虫症以外は,満足な結果を得ていない。抗原検出は確定診断につながることから,将来的に多くの蠕虫症についても,他の様々な分野での進展にともなって,抗原検出法の確立が望まれている。
- 金沢医科大学の論文
著者
関連論文
- 175 ヒョウヒダニ抗原の耳介部への塗布によるアトピー性皮膚炎モデルマウスの作製
- C08 山林に隣接したフィールドアスレチックにおけるマダニの生息状況
- クロルヘキシジン点眼が有効であったアカントアメーバ角膜炎の1例
- B06 重篤な皮膚炎を発症したケモチダニ感染NCマウスにおけるダニが保有するシステインプロテアーゼの意義(第59回日本衛生動物学会大会特集)
- 石川県能登半島で経験したマダニ刺症 11 例
- B10 石川県能登半島における2004年ツツガムシ病発生とタテツツガムシの初確認
- B28 2005年における石川県能登半島を中心としたツツガムシ病およびマダニ媒介性疾患の基礎調査(一般講演,演題要旨,第58回日本衛生動物学会大会)
- 寄生蠕虫症の免疫診断