心筋自動能の発生機序 : 非線形力学系モデルの分岐構造解析による理論的検討
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概要
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洞結節の生理的自動能と固有心筋に生じる異常自動能の発生機序を理解することは,不整脈の予防と治療方法の確立,或いはバイオペースメーカー(BP)システムの開発において極めて重要である。しかしながら,多くの実験データの蓄積にもかかわらず,自動能発生機序の十分な理解はなされていない。心筋細胞は非線形システムであり,自動能の発現・消失は,非線形力学系が示す分岐現象の一つである。そこで我々は,ウサギ洞結節細胞及びヒト心室筋細胞の非線形力学モデルを作成し,その分岐構造(平衡点及び周期軌道の安定性とそのパラメータ依存性変化)を解析することにより,自動能の力学的発現機構(各イオン電流系の役割)を検討した。洞結節モデルの分岐構造解析から,1)L型Ca^<2+>チャネル電流は平衡点の不安定化に寄与している点で生理的自動能の発現に不可欠であること,2)遅延整流K^+電流は活動電位振幅の増大と自動能周期の安定化,さらには構造安定性の強化に寄与していること,が明らかとなった。一方,ヒト心室筋モデルの分岐構造解析から,内向き整流K^+電流抑制によってサドルーノード分岐(安定平衡点の消失)が生じ,BP活性が発現し得ることが証明された。BP活性の力学的機序は洞結節自動能と本質的に同じであると考えられた。このような非線形力学的アプローチが,不整脈の統一的理解と体系的記述,最適BPシステムの設計を可能にするものと期待される。
- 金沢医科大学の論文
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