FISH法を用いた骨外性粘液型軟骨肉腫における融合遺伝子の検討と発癌機構の解析
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概要
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骨外性粘液型軟骨肉腫(EMC)は稀な軟部肉腫で,特異的な融合遺伝子EWS-CHN, TAF2N-CHN, TCF12-CHN, TFG-CHNの形成が知られ,腫瘍発生機序との関連が疑われている。しかし,RT-PCRを用いても融合遺伝子が検出されないEMCも存在するため,本研究ではEWSとCHN各遺伝子のcentromere側とtelomere側を標識したdual color FISHを行って検索した。その結果,RT-PCRで融合遺伝子(EWS-CHN, TAF-CHN)が確認されたEMC症例は全例で陽性所見が得られ,さらにRT-PCRでは融合遺伝子が未検出の2症例にも転座の可能性が示唆された。次に,EMC15例にp53遺伝子産物に対する免疫染色を施行したところ,9例に部分的な陽性所見,6例に陰性所見を得たため,EMC発生とp53遺伝子との関係に注目した。p53経路とEMCの関連を調べるために,p21プロモーター下流にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだレポータープラスミド(pGLp21)を導入した細胞で,ルシフェラーゼ活性を測定した。その結果,EWS-CHN融合遺伝子の発現ベクター(pEC1.5, pEWS/CHN)を導入した場合,コントロールと比べてルシフェラーゼ活性が低下する傾向を示した。以上の結果から, EWS-CHN融合遺伝子の発現はp53経路に影響を与え,p21蛋白発現を低下させるため,G_1期停止が起こらずEMC発生へ向かう可能性が示唆された。しかし,CHN遺伝子の発現ベクター(pCHN)導入でもルシフェラーゼ活性が低下する傾向を示したことから,EWS-CHN融合遺伝子発現蛋白はp53経路やp21蛋白発現に影響を与えるもののその他の複数の要因が存在し,EMC発症に至る可能性が考えられた。
- 金沢医科大学の論文
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