血痕からのHLAタイピングに関する基礎的研究
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概要
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血痕からのHLA型の型別を行なう基礎的研究として,HLA-A2,A9,B5の3抗原を検査対象とし,リンパ球細胞毒抑制試験の検査条件を検討した。細胞毒抑制試験による型は対応する抗体の細胞毒性を50%以上抑制した血痕を抗原陽性と判定したが,細胞毒抑制試験は一定量の血痕の生食水抽出液を使用するTwo-Stage法と予め一定量の血痕で吸収した抗体を使用するOne-Stage法により実施した。被検血痕は38例,使用抗血清は17種,判定の指示血球であるリンパ球は常に同じ4名から採血,分離して使用した。リンパ球細胞毒抑制試験としてこれまで報告されてきたTwo-Stage法,One-Stage法により血痕のHLA抗原を検出することは可能であったが,抗血清によっては偽陽性反応が出現するので,予め使用する抗血清の吟味が必要である。検査可能な限界は血粉量は250mg/ml,血痕ガーゼは1cm^2であったが,実際の検査試料の血痕の付着量は不明であるから,検査可能な限界を血痕浸出液のヘモグロビン量に求めたところ,約3mg以上のヘモグロビンがあれば検査可能であった。偽陽性反応発現の原因としてcross-reactive antigenの存在が考えられたが,明らかに他の抗原との反応が否定されている抗血清でも偽陽性反応が出現しており,また力価の低い抗血清で発現しやすく,血痕,血清の使用量が増加すると発現する傾向が見られたので,その原因は抗血清自体並びに血痕中の抗補体作用によるものと推察された。抗原抗体反応終了後,補体添加前に洗浄を行う試験法(洗浄法)を用いたところcross-reaction以外の偽陽性反応は消失した。HLA抗原の耐時性をHLA-A9抗原について検討したところ42日後でもHLA抗原の検出が可能であった。
- 千葉大学の論文
- 1990-04-01
著者
-
佐藤 弥生
千葉大学 法医
-
木内 政寛
千葉大学
-
佐藤 彌生
千葉大学医学部法医学講座
-
木内 政寛
Department of Legal Medicine, School of Medicine, Chiba University
-
Kiuchi Masahiro
Department Of Legal Medicine Chiba University School Of Medicine
-
木内 政寛
千葉大学医学部法医学講座
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