ラット単離肝細胞のバソプレッシン刺激時のグリコーゲン分解に於けるシトクロムP-450依存性エポキシゲナーゼ代謝産物の役割
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概要
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近年アラキドン酸(AA)の新たな代謝経路としてシトクロム P-450依存性のエポキシゲナーゼ経路(EO系)の存在が報告され,この経路で産生されたepoxyeicosatrienoic acid (EET)が種々の生理作用を持つ事が明らかにされつつある。そこでシトクロムP-450を豊富に含有する肝に注目し,ホルモン作用におけるEETの役割を解明する目的で,バソプレッシン(AVP)刺激時のグリコーゲン分解におけるEETの関与について検討した。Wistar 7週令雄性ラットの肝ミクロソーム画分を用い〔1-^<14>C〕AAから産生されるエポキシゲナーゼ代謝産物をHPLCで同定した。次に同ラットより調製した単離肝細胞を用いAVP刺激時のグリコーゲン分解に及ぼすシトクロムP-450の代表的阻害剤のSKF525Aの影響についてグリコーゲン分解律速酵素のphosphorylase-a (1, 4-α-D-Glucan: orthophosphate α-D-glucosyltransferase; EC2.4.1.1)及び細胞内Ca^<2+>を指標に検討し,さらにEETのphosphorylase-a及び細胞内Ca^<2+>濃度に与える影響を検討した。その結果,1)肝ミクロソームからは5, 6-; 8, 9-; 11, 12-; 14, 15-EETが産生され14, 15-EETの産生量が最も多かった。2) SKF525Aは濃度依存性にAVP刺激によるphosphorylase-a活性及び細胞内Ca^<2+>を抑制した。3) EET添加は濃度依存性に細胞内Ca^<2+>濃度を上昇させる一方phosphorylaseを活性化した。肝で産生される4種のEETのなかで,14, 15-EETがphosphorylase活性化及び細胞内Ca^<2+>上昇における力価が一番高かった。肝のミクロソームのEO系で産生されるEETは,細胞内Ca^<2+>上昇作用を有し,AVP刺激によるphosphorylaseの活性化,即ちグリコーゲン分解に一定の役割を果たしている可能性が示唆された。
- 千葉大学の論文
- 1989-12-25
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