覚醒剤精神病の臨床精神病理学的研究 : 陰性症状評価尺度による精神分裂病との比較
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概要
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慢性の経過をとる覚醒剤精神病者11例及びそれら症例に性別・年齢をmatchさせた同数の慢性分裂病者を対象とした。覚醒剤精神病の臨床精神病理学的特徴について分裂病との異同を検討した結果,両者の相違は陽性症状でなく主として陰性症状に認められた。更に,陰性症状評価尺度SANSを用い定量的に比較検討したところ,覚醒剤群と分裂病群は共に意欲・発動性欠如,快感消失・非社交性及び注意の障害において中等度の障害が認められたが,情動の平板化・情動鈍麻及び思考の貧困において覚醒剤群は分裂病群に比べて障害の程度が軽かった。更に覚醒剤群は発病年齢が高くなるほど陰性症状の障害の程度も高度であったが,分裂病群ではそれらの間に相関は認められなかった。また,両者にはSANSで把えきれない側面として以下の3点で明らかな差異を認めた。(1)覚醒剤精神病者は情動の表出,対人接触性において放置された状態と診察時では全く異なり,この切り変りは瞬時とも言えるほど急であった。(2)覚醒剤精精神病者では分裂病者に認められたRumkeの言うプレコックス感を感じさせる者はいなかった。(3)放置された状態では,分裂病者は異質の存在感を認めるが,覚醒剤精神病者はむしろ人間としての存在感に乏しい。以上諸点における量的,質的相違が両群の間に認められたことは,その基盤となる両者の病理過程が微妙に異なっていることを示唆していると思われた。
- 1987-06-01
著者
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