色彩を表す名詞の連体修飾用法 : 「赤のN」と「赤いN」
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概要
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色彩を表す語の中には、「赤の鞄」「赤い鞄」のように名詞と形容詞とが対を成すものがある。両者は意味的な対応関係を持つものの、常に互換可能だというわけではない。本稿は「赤のN」が「赤いN」との対立関係の中でいかなる意味機能を担っているのか、考察を行う。従来、「赤のN」を非制限的用法として使用するのは不自然であるという指摘がなされている。たとえば「赤の太陽」「赤の血」などの表現は、制限的用法であると解釈できる文脈を与えない限り、容認され難いとされる。これに対し本稿は、これらが非制限的用法として、容認される場合があることを指摘する。このような事実をふまえ、「赤のN」はコンテクスト中に存在するほかの色彩との対比の中でNの性質(赤さ)について述べる場合に用いられるという結論を得る。他の色彩との対比の中であるモノの赤さについて述べるためには、その「赤」が典型的な「赤」であることが必要条件となる。本稿の結論は、「赤のN」における「赤」が、被修飾名詞によって設定される属性の集合の中からではなく、文脈中に存在する色彩の集合の中から「赤」という色を指定する機能を持つことを示している。