犯罪被害者の「回復」とその支援 : 交通犯罪被害者遺族における被害者化過程の事例研究を通して(II 自由論文)
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概要
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本稿は,犯罪被害者(被害者家族も含める)のアイデンティティの問題に相互行為論的に接近し,被害者の「回復」とその支援に関する基礎考察として,被害者化過程の対自的側面について検討する.こうしたテーマを追究するために,ある交通犯罪被害者遺族の経験と,この遺族の主宰するセルフ・ヘルプ・グループの活動に関して,ヒアリング調査に基づき事例研究を試みる.被害者にとって,被害とは喪失体験として把握されうるが,被害者化過程の初期段階ではしばしば,喪失体験を自己の経験のうちに秩序立てて組織化することが妨げられる.このような,喪失体験によるリアリティの意味喪失によって,被害者にはアイデンティティの価値の自己貶降が現象しうる.被害者は喪失体験を,対象化・過去化の困難によってそれとして語りえず,また,周囲の他者との間でのリアリティ分離のために,被害者の語りの封殺,経験の無効化が生じる.それが被害者の再度のアイデンティティ自己貶降や自己帰責をもたらし,被害者は被害者としての自己同定の困難を抱える.そうした困難からの「回復」へ向けたニーズに対応する支援として,情報提供,精神的ケア,セルフ・ヘルプ・グループが挙げられる.
- 2003-10-18
著者
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