年齢の変化とトラッキング・スキルにおける直接見越,直接再生,後見の範囲
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概要
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一次元トラッキング動作における直接見越(Preview)と直接再生(Masking)の範囲について,とくに年齢の変化を検討するために実験を行なった。また,結果の知識と関係する後且(Postview)の範囲についても初歩的な検討を加えた。成人と小学生を,それぞれ125名ずつ被験者として,刺激呈示速度2cm/secの条件で5つのMasking levelsと5つのPreview levelsをお互いに組合せた条件に割り当てた。そして,近い将来の見越しと近い過去の再生という動作時の有効適切な範囲を求めた。また,MaskingとPreviewのすべての組合せ条件について,成人と小学生の得点を比較した。その結果,いくつかの条件分析で成人と小学生の両年齢群に大体同じ結果が見出された。つまり,両年齢群とも,Maskingの幅が3cm以上になると急に誤りが多くなるという特徴を示しながら,順次,Maskingの幅が大きくなるにつれて,正答数は減少する傾向にあるというこれまでの知見と同様な結果が見出された。Previewについても,その範囲が大きくなるにつれて,成績は良くなるが,成人も小学もともにPreview 5cmでは,その直線関係がくずれ,エラーが生じる現象がみられた。さらに,PreviewとMaskingの幅を組織的に組合せた結果,両年齢群とも,Maskingが0cmでPreviewが2cmの範囲が最も有効な範囲として(M0:P3),(M0:P5)の条件が共通して得点が高かったのは興味深い。一方,動作範囲の最も悪い条件は,(M5:P1)で両年齢群において同じ結果を示した。次に悪い範囲は成人では,(M5:P0.5),(M5:P2)であり,小学校では(M3:P1),(M5:P2)と,ひとつの条件だけ異なっていて,両群とも,有効な範囲や非有効的な範囲に関しては著しく類似した結果が見出されている。このような,範囲についての一般的な類似にもかかわらずそれぞれの条件でのパーフォーマンス得点は,有意に成人群の方が小学生群よりすぐれていた。小学年の直接再生や直接見越しの能力が,組織的なトレーニングを得なくても自然発生的に,成人の能力に到達するかもしれないし,そうはならないかもしれない。しかし,近い過去を再生する能力や近い将来を見越す能力は学習によって身につくものであるかぎり,こういった研究がさらに行なわれる必要があると思う。この研究での知見の大部分は,以前の調枝,(1968),(1970)の報告やPoulton,E,C(1963)の研究知見と大きくは矛盾しないことがわかった。現象的な資料をもとに,スキルの内部構造に接近することが今後の課題となる。なお,Postviewの範囲については,6つの条件で検討が試みられたが,被験者などに問題があり,実験計画上の手続が侮やまれ,期待するほどの結果は生じなかった。
- 横浜国立大学の論文
- 1972-10-02
著者
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