メチル水銀投与ラットの体内における水銀化合物の分布とその組成に関する研究
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概要
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ラット体内の水銀化合物の組成を解析するため、ガスクロマト法による有機水銀の測定と還元気化ジチゾン法による総水銀の測定をメチル水銀投与ラットの臓器について行い、肝、脾及び腎中の水銀化合物の分布と組成について検討した。その結果は以下の通りである。1.5mg投与群においては肝のメチル水銀は35.18Hgμg/g、エチル水銀は9.73Hgμ/g、無機水銀は24.42Hgμg/g、総水銀は69.33Hgμg/gであり、その構成比はメチル水銀が50.7%、エチル水銀が14.0%、無機水銀が35.3%であった。脾ではメチル水銀は39.18Hgμg/g、エチル水銀は8.13Hgμg/g、無機水銀は27.47Hgμg/g、総水銀は74.78Hgμg/gであり、その構成比はメチル水銀が52.4%、エル水銀が10.9%、無機水銀が36.7%であり、肝と脾ではその構成比が類似していた。また、腎のメチル水銀は58.23Hgμg/g、エチル水銀は10.33Hgμg/g、無機水銀は12.12Hgμg/g、総水銀は80.68Hgμg/gであり、その構成比はメチル水銀が72.2%、エチル水銀が12.8%、無機水銀が15.0%であり、腎のメチル水銀値は肝と脾に比べ有意に高く、逆に無機水銀値は有意に低い値を示した。2.8mg投与群においては肝のメチル水銀は64.38Hgμg/g、エチル水銀は15.33Hgμg/g、無機水銀は38.49Hgμg/g、総水銀は118.2Hgμg/gであり、その構成比はメチル水銀が54.5%、エチル水銀が13.0%、無機水銀が32.5%であった。脾のメチル水銀は87.1Hgμg/g、エチル水銀は12.5Hgμg/g、無機水銀は31.05Hgμg/g、総水銀は130.53Hgμg/gであり、その構成比はメチル水銀が66.7%、エチル水銀が9.6%、無機水銀が23.7%であり、メチル水銀値においてのみ肝よりも有意に高い値を示した。腎のメチル水銀は87.3Hgμg/g、エチル水銀は9.55Hgμg/g、無機水銀は20.33Hgμg/g、総水銀は117.18Hgμg/gであり、その構成比はメチル水銀が74.5%、エチル水銀が8.1%、無機水銀が17.4%であり、メチル水銀において肝よりも有意に高値を示し、無機水銀においては肝及び脾よりも有意に低い値を示した。肝及び腎の水銀化合物の構成比は5mg投与群と8mg投与群において、いずれも変化を示さなかったが、脾においては大きな変動が見られた。3.肝と脾及び腎のいずれの器官においても投与したメチル水銀と共にエチル水銀及び無機水銀が検出された事は、脱メチル化による無機水銀の生成とメチル化によるエチル水銀の生成がラット体内で同時に進行していると推測され、さらに、肝及びはは無機水銀生成の場として重要であり、ことに肝は投与量に関係なくメチル水銀の無機化が行われるのに対し、脾のメチル水銀の無機化が行われるのに対し、脾のメチル水銀の無機化処理能力には限界があると考えられる。
- 九州女子大学・九州女子短期大学の論文
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