社会規範の「ヨーロッパ化」の政治過程 : ドイツとオーストリアにおける反差別指令の国内法制化(<特集>欧州統合と民主的統治)
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概要
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1990年代以降,社会規範に関わる分野でもEUレヴェルの立法が見られるようになった.しかし各社会の規範意識には差異があり,国内法制化は極めてセンシティヴなものとなる.本稿はその一例として反差別指令のドイツとオーストリアにおける国内法制化過程を分析する.これにより,以下の二つの点に光を当てるのが本稿の目的である.第一に,従来の「ヨーロッパ化(Europeanization)」研究は構造的要因に注目した政策分析を行ってきたが,国内の政治過程とその変容の意義は軽視されるべきではない.とりわけ指令置き換えという「外圧」を内政上の資源として利用しようとする政権の戦略,内政とヨーロッパのタイムテーブルのズレ,という二つの要因が本稿の中心におかれる.第二に本稿が照らし出すのは,「ヨーロッパ」に実体的価値を担わせることで,統合の正統性を獲得する試みから生じる衝突である.「民主主義の赤字」問題の本質が,EU機構の抽象的な民主性評価ではなく,「実感」に基づく一般市民の不満であるならば,この衝突は,憲法制定などにより問題を一挙に解決しようとする戦略の困難を示唆するだろう.
- 2006-01-31
著者
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