木材のせん断に関する弾塑性論および破壊力学的研究 : (第4報)面内せん断破壊じん性
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概要
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木材を含むすべての構造材料に関し, その内部に存在するクラックがモードII(面内すべり変形)によって進展することに対する抵抗, すなわち破壊力学におけるモードIIの破壊じん性〓_<IIc>は, その適切な測定法が確立していないため, 純粋な〓_<IIc>の値はほとんど知られていない.この論文においては, 木材の繊維に平行なクラックが, 繊維の方向に進展する場合の〓_<IIc>を測定する方法について考究した.Fig.1のような長方形断面(b×h)のはりの高さの中央に長さaの水平なクラックを入れ, スパンlで単純に支持し, クラック側支点から距離cの位置に集中荷重Pを作用させる.一定変位(たわみ)速度で徐々に荷重を増大していくとP=P_cでクラックの進展が開始する.c=0.6lとし, 変位速度2mm/minのとき, a=0.25l程度の場合P=P_cで急速なクラック進展が生じ, 荷重の急激な低下を生じるのでP_cを明確に定めるには都合がよい.材料力学のはり理論にしたがって, この場合の曲げの弾性ひずみエネルギーUを求め, 〓=∂U/b∂aからエネルギー解放率を定めると(10), (11)式を得る.この式のPに測定値P_cを代入すれば, 定義にしたがって, クラック進展開始に対する破壊じん性〓_cが定まる.この方法によって荷重したときの変位および応力を, 有限要素法で解析した結果, 試片全体の変形はFig.8(A)のようであるが, クラック先端近傍の変位はFig.8(B)に, クラック先端前方, クラック進展面上の引張応力σ_y, せん断応力τ_<xy>はFig.8(C)に示される通りである.クラック先端近傍でごくわずかの開口変位を伴うが, 水平方向のすべり変位が圧倒的に大きく, またσ_yのτ_<xy>に対する比は10^<-4>のオーダーであり, ほとんど純粋なモードIIであることがわかる.スギ気乾材(b×h×l=2×2×30cm), LTクラック面, L方向進展について得られた〓_<IIc>はFig.6のように初期クラック長に関係なく平均値0.367kg/cm, 変動係数18%であった.またスパンl=30cmに対し, h=1.5,2.5,3.0cmに変えて同じ方法で求めた〓_<IIc>はFig.7のようになり, h/lのこの範囲の変化に対しては寸法比に関係なく, 材料特性値として一定の値を与え, 〓_<IIc>測定法の妥当性を示した.
- 1983-03-15
著者
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