木材のせん断に関する弾塑性論および破壊力学的研究 : (第3報)椅子型(JIS)せん断試験体の応力特異性とエネルギー解放率
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
JISおよびASTM規格では, 木材の繊維に平行なせん断強さτ_CをFig.1に示す方法で試験するように規定されている.この試験体の応力分布を求めるために有限要素法による数値解析を行なった.その結果せん断面AH上のせん断応力τ(=τ_<xy>), および垂直応力σ(=σ_x)の分布は, Y=0〜29mmの範囲で, Fig.5のT(1), N(1)のようであることが示された.(同図のT(2), N(2)は荷重が等分布であると仮定したときのものである.)切欠き底の近傍で, 同じくせん断面上のσおよびτは切欠き底からの距離をγとしていずれも(25)式の形になりr^<-(0.51〜0.62)>, γ^<-(0.55〜0.58)>の特異性を示す結果を得た.数値計算はすべてスギ気乾材の標準的な弾性定数を用いて行なったが, これら応力特異性の次数および応力拡大係数に相当する(25)式のK_t, K_nは境界条件とともに材料の弾性定数に依存することが知られた.平均せん断応力τ^^-=1kg/mm^2のもとで, 切欠き底からせん断面に沿ってクラックが発生する際のポテンシャルエネルギーの解放(減少)率(〓^*)_<τ^^-=1>は, 同じくスギ気乾材について0.34〜0.44kg/mmと計算された.鋭い切欠き, したがって応力特異性を有するこのような試験体で(弾性)応力集中率を云々することは無意味であるから, 破壊基準を定めるにはこのエネルギー解放率を力学的環境のパラメーターとすることが合理的である.実験で求められたτ_Cと上記の(〓^*)_<τ^^-=1>とから, スギ気乾材, 椅子型試験体の破壊靭性〓^*_Cの値は0.10〜0.28kg/mmと推定される.せん断破壊時の変形モードはおそらくモードIとモードIIの複合であると予想されるので, この〓^*_Cは複合モードに対するものであり, 直角ノッチを有し, その縁にせん断荷重を受ける木構造部材の破壊靭性値に相当するものと考える.
- 鹿児島大学の論文
- 1980-03-19
著者
関連論文
- 木材のせん断に関する弾塑性論および破壊力学的研究 : (第4報)面内せん断破壊じん性
- 木材のせん断に関する弾塑性論および破壊力学的研究 : (第3報)椅子型(JIS)せん断試験体の応力特異性とエネルギー解放率