梁啓超にみる国民性改造の思想 : 「奴性」と「愛国心」という二つの鍵概念をめぐって
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概要
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近代中国は列強の侵略によって瓜分(分割)される危機に立たされていた。中国を亡国の危機から救うため,いちもく早く国民性の問題に気づいた梁啓超は,進んだ西洋の技術を取り入れることだけでは限界があることに気づき,独立国家を建設するため,まず国民性を改造し,独立自尊の国民を育てなければならないと考えた。梁啓超は,明治時代の日本における14年間に及ぶ亡命生活を体験し,当時の日本の思想家から多大な影響を受けながら,西洋思想も受容し,それを彼の国民性改造の取り組みにも生かされた。本稿は彼が国民性の改造において,もっとも注目した奴隷根性と愛国心という相対する二つの概念を軸に分析し,彼の国民性改造の思想を明らかにせんとしたものである。彼は,中国が数千年にわたって極めて衰え弱まったことについて,最大の原因は中国の古い慣習などによる人々の心に染み込んだ奴隷根性にあると分析し,その奴隷根性こそ,人々の自由人としての人格を奪い,自ら自己の権利を放棄するという弊害をもたらしたと指摘した。彼は国民性を改造するに当たって,最大の課題はその奴隷根性を取り除くことであると認識し,民権,つまり自由権の伸張を主張した。それは古い慣習を打ち破り,古人の束縛から抜け出して,他人に頼らず,自己の独立を確立することである。梁啓超は個人の独立を推し進めてこそ,はじめて一国の独立が実現できると認識し,己を愛する心から国を愛する心を喚起し,民衆に国家の一員である自覚を持つよう呼びかけたのである。
- 2006-03-01
著者
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- 翻訳 : 梁啓超「新民説」(『新民叢報』1902.2.-1906.3.)
- 翻訳と紹介 : 梁啓超「新民説」(『新民叢報』1902.2.-1906.3.)