「郊外」の意識特性についての一考察 : 階層帰属意識の分析から
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概要
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近年の階層帰属意識についての研究では,客観的社会状況とその主観的認識とのズレを問題にする観点から,階層帰属意識の規定要因について,それを地域的要因によって説明しようという試みがみられる.このような関心を更に進めるためには,仮説にもとづいて更に地域の特性を細かく分類した上で,同様の分析を行なうことで,その結果を解釈していくということが不可欠である.その点で,本稿が注目するのは,「郊外」という空間である.本稿は,郊外という空間に暮らす人々の意識や価値観が,他の地域に暮らす人々とはんとうに異なっているのか,また,どこが異なっているのかということについて階層帰属意識という指標から迫ろうとするものである.データとしては1995年SSM調査のデータを市区町村データと結合したものを用い,このデータを「人口集中地域人口率」,「他市区町村での就業率」,「昼間人口」という指標によって分類することで「郊外」を操作化する.これによって,「郊外」における階層帰属意識の規定要因がどのようなものなのかが,重回帰分析によって論じられた結果,男性有職サンプル,女性サンプルともにモデルの説明力が「郊外」においてもっとも高いという傾向が示された.これは,なんらかの理由によって自身の階層をはっきりとさせたいという心性が,「郊外」に生活する人々においてより強く現れた結果であると考えられる.
- 仁愛大学の論文
- 2006-03-31