方解石質最外殻層を持つ日本産キクザルガイ科二枚貝の1新種
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概要
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国立科学博物館及び九州大学理学部地球惑星科学教室所蔵のキクザルガイ科二枚貝の標本群を検討したところ,未記載の新種が1種発見されたのでここに記載,報告する。Chama cerinorhodon n. sp.イチゴキクザルガイ(黒田;新種)殻は厚く,殻長は約20mmと小型,輪郭は円形,または楕円形で,やや不規則。底質に左殻で固着する。両殻とも外表面は板状突起によって同心円状に密に装飾され,独特の蝋状のつやのある半透明の質感を持つ。殻色は赤色がかった桃色から白色。内面は白色で,陶質。閉殻筋痕は背腹方向に長い。腹縁は細かく刻まれる。胎殻は小型(長さの平均0.48mm)。こう歯の特徴はキクザルガイ科のそれに準ずるが,強くは発達しない。原殻は同心円状の成長線,初期後生殻は細かい放射肋と等間隔の同心円肋で装飾される。貝殻構造はアラレ石質の内殻層(複合交差板構造)と中殻層(交差板構造)及び方解石質の最外殻層の3層構造。最外殻層は不規則な形状のブロックの集合によって形成され,北東太平洋のChama arcana Bernard,1976のものに似る。ホロタイプ: GK.N10108-2,九州大学総合研究博物館所蔵。タイプ産地:福岡県糸島郡志摩町姫島周辺。分布:更新世:宮田層,神奈川県横須賀市津久井。現生:北海道南部から九州。Chama fragum Reeve,1846に同定されてきたが,Chama fragumのシンタイプを検討した結果,貝殻構造及び貝殻鉱物の違いから別種であることが分かった。また,東太平洋にChama arcana Bernard,1976とChama pellucida Broderip,1835は殻のサイズが大きく違うが,形態及び殻構造,殻鉱物の特徴が良く一致するため,近縁であると思われる。
- 2005-06-30
著者
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松隈 明彦
Kyushu University Museum
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松隈 明彦
Kyushu University
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濱田 直人
Kumamoto University
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浜田 直人
Kumamoto University
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