言語理論によるアラブ文化・日本文化本質の比較的研究
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概要
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本研究は言語理論を用いることによりアラブ文化と日本文化の関係を明確にすることを目的としている。言語理論の為の調査は,トヨタ財団の研究資金援助により,日本,ハワイ,米本土,カイロ,アマン,において大学生を対象に,日・英・アラブ語で行なわれた。同じ内容のアンケートを日・英両語で日本の学生,アメリカ在住の日本人留学坐,日本語の出来るアメリカ人学生に与えた場合,質問の言語により返答の内容に一定の変化が起こる事実を発見した上で,アラブ,英両語を使用した場合,いかなる変化が生じるかを調査した。文化の本質は,その文化の自己観と世界観に最も影響を受けるという推論の基に今回の調査を行なったわけだが,調査結果を通じて日米文化を次の様に性格づける事が可能であると思われる。[table]すなわち自己観・世界観は国籍に左右されるのでなく,使用している言語によってより決定的に形成される事が実証的に証明された。つまりアラブ人がアラブ文化の一員であることは,アラブ語によって決定され,故に英語で話す時のアラブ人はアメリカ文化的な人間になることが判明したのである。日本人も英語で話す時は簡単に且つ明確に自己主張をする人間になり,逆に日本語で話すアメリカ人は曖味な日本的アメリカ人になってしまうのである。アラブ文化は日本文化と同様に自己観に関するかぎり族文化に属すが,世界観は二元論に象徴される絶対的な考えに基盤を置くものであるといえる。アメリカ文化は個人主義的であり,周りの人たちに構わず気にせずに楽観的であり,又日本人に比べると二元論的に思考するというデータ解析結果を得ることが出来た。言語理論による文化本質の比較研究は,各文化の規範はおそらくその言語と宗教によって大きな影響を受けているであろうということを示唆するものであろう。
- 1998-03-31
著者
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黒田 安昌
Political Science, University of Hawaii at Manoa
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黒田 安昌
Political Science University Of Hawaii At Manoa