肥満要因としての食に関する日本とアメリカの異文化間比較の統計分析
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概要
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この調査研究は、栄養に関し異なった段階で変化していった、日本とアメリカの食に対する考え方を比較したものである。アンケート調査は、2000年10月から2001年4月にかけて行われ、日本とアメリカで学ぶ18歳以上の学生1218名のデータを基に、「食べるための動機づけ尺度」(MFES)を用いて、国民性、性別の違いを評価・分析した。MFESは、どのようなときに食べたくなるかを、肉体的(空腹を感じたとき、食べていないときなど)、環境・状況的(おいしそうなものを見たとき、食事の時間になったときなど)、情緒・感情的(退屈なとき、嬉しいときなど)の3つに分類している。アンケート項目には、回答者の身長、体重、減量に対しての関心度、減量の頻度、摂食障害の有無、運動量なども含まれている。調査結果は予想したように、アメリカ人は男女とも日本人と比べて大り気味(BMI=25〜29)、肥満(BMI≧30)の率がはるかに高かった。(表1参照)また、男性については、MFESの3つの分野において日本人とアメリカ人との目立った違いは見られなかった。(表2参照)しかし、女性に関しては、3つの分野ともに違いが現われており、特に環境・状況的分野においては差異が目立った。(表3参照)アメリカ人は男女ともに、テレビやビデオを見ているときに食べ物を食べたくなる傾向が日本人より強く、特に男性に間してはその傾向が著しかった。日米ともに栄養に対する認識は高まってきているが、脂質の摂取量や肥満の割合には依然として大きな違いが見られる。異文化を背景とした国による食文化の違いが、個々の食に対する欲求、考え方に影響を与えていることがこれらの結果から読み取ることができる。(表4、5参照)食に対する個々の動機づけに適正な影響を与えるためには、栄養についての認識を高め、公衆衛生、健康増進を推し進めることが必要であることが改めて理解できる。