遺伝子情報の性質に関する一考察 : アナスとマレイの議論を中心にして
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概要
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遺伝子技術や遺伝子関連医療から生じる倫理的問題を理解するためには、「遺伝子情報とは何か」について考えることが不可欠である。本稿では、「遺伝子情報とは何か」を理解する一つの試みとして、遺伝子情報の性質について考察する。遺伝子情報の性質は、予見性、遺伝性・共有性、危害性の三種類に分類することができると考えられる。そして、これらが遺伝子情報こ特有な性質か否かを吟味するために、George AnnasとThomas H. Murrayの主張を比較考察した。予見性、危害性の性質に関しては、遺伝子情報は他の医学情報と変わりはないが、遺伝性・共有性の性質に関しては、遺伝子情報の「本質」的性質と遺伝子情報から受ける「イメージ」的性質を厳密に区別する観点から考察した結果、遺伝子情報に特有な性質であると結論した。「本質」的性質と「イメージ」的性質を区別することが、遺伝子情報に起因する倫理的、社会的問題を考える上で重要になるであろう。
- 日本生命倫理学会の論文
- 2002-09-17