仙台湾に注ぐ2つの河川の河口に位置する汽水性干潟の底生動物と堆積物の比較研究
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概要
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仙台湾に注ぐ七北田川河口に位置する蒲生干潟と名取川河口の井戸浦干潟において、大型底生動物と堆積物および干潟に沈殿する粒状物質を1989年9月と1990年1月、4月、7月に採集し、底生動物の組成やバイオマスと堆積物・沈殿物の粒度組成、Eh、炭素量、窒素量、C/N比を調べ、干潟間で比較した。その結果、大型底生動物種はほとんどが堆積物食者で、その組成は両干潟で類似していたが、優占種は異なっており、この優占種の違いをもたらす要因の一つとして、両干潟の堆積物の粒度組成の違いがあげられる。干潟堆積物とセジメント・トラップで採集した沈殿物のC/N比から、蒲生干潟の堆積物の有機物は植物プランクトン起源の有機物、井戸浦干潟では陸上の維管束植物起源の有機物の比率がより高く、蒲生干潟の沈殿物の方が堆積物食者の餌としての栄養価が高いと考えられた。蒲生干潟の底生動物のバイオマスは井戸浦干潟よりも大きい。蒲生干潟では沈殿有機物の量が多く、しかも栄養価が高いことが、蒲生干潟の底生動物の大きなバイオマスの理由と考えられる。蒲生干潟では高温の時期(9月、7月)には、堆積物のEhと沈澱炭素量が底生動物のバイオマスとそれぞれ正と負の相関関係を持つ。この事実は、蒲生干潟の有機物の沈澱量が多い場所では、夏期には、活発な有機物の分解に伴ってEhが低下し、無酸素で還元的な環境が発達することが底生動物のバイオマスの増加を抑える要因になることを示唆している。
- 1999-03-31
著者
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