ヤスパースの哲学におけるカントの影響 : とくにその方法論をめぐって
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概要
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ヤスパースの哲学におけるカントの影響、とりわけその方法論について考察する。そうした影響は、ごく初期の時代において、すでに明確に認められる。わけても、彼が本格的な哲学研究を始める宣言の書とも言うべき『世界観の心理学』が重要である。カント哲学を「自己自身を克服する合理主義でないような合理主義」、この意味での徹底的合理主義とみなすそこでのカント解釈は、後の『哲学』や『真理について』、また彼のカント書においても一貫している。加えて、こうしたカント解釈を通して示される徹底的合理主義は、「形式的超越」や「哲学的基本操作」といったヤスパース自身の哲学の方法とも重なってくる。小論の第一の目的はこの点を、ヤスパース自身の言葉を丹念にたどりながら明らかにすることにある。しかし、当然かかるカント解釈、またその影響下にあるヤスパースの哲学方法論を批判的に吟味することも大切である。そこで『世界観の心理学』に対する代表的な二つの批判を取り上げる。一つは、新カント派のリッカートによる批判であり、もう一つはハイデッガーの批判である。とくに後者の批判は、ヤスパースのカント解釈、哲学方法論を吟味する上で重要である。二人を対照させることで、「形而上学のゆくえ」について何らかの示唆が得られるのではないか。これが小論の第二の目論見である。
- 2005-03-25
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